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妻の日の愛のかたみに 1965

東京出張のついでに立ち寄った御茶ノ水駅前の中古レコード屋で若尾文子のDVDを5枚も見つけてしまいました、さすが東京。うち4枚は済みなので、未視聴のこの作品をゲットして持ち帰り、観ました。富本壮吉監督なのでテキパキしているハズが、単調なストーリーなのでなかなか難しかったのでしょう、やや中だるみで89分のところを60分くらいに短縮できた気もします。

冒頭のシーンは忘れがたいですね。花嫁さんがお披露目に九州・柳川を舟で下る。「この道はぁ、いつか来た道~」と歌う北原白秋ゆかりの地で、とても風情があり、そこを超絶美形の文子様が舟に乗り、川岸から「おめでとう」「おめでとう」の掛け声に恥じらいながら笑顔を返す。堪らないですね、そしてストーリー的にも幸せの絶頂。不幸な結末のあと全編終了後に冒頭のこのシーンをもう一度見るとまたなんとも味わい深く、若尾文子映画の中でもひときわ印象深い場面です。見終わってからまたこのシーンを見たら、将来の悲しみをたたえて居るみたいな表情に思えてきます。これだけで泣きそう(泣きません)。
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美しい妻と誠実な夫にやがて不幸が訪れます。最愛の女性が不治の病にかかるというパターンで、夫を愛するがゆえに彼女は離婚を申し出ます。夫は承知しないものの、はて、そんなものなのかなあ、寝た切りで妻失格と分かれば身を引きたくなるって。
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     以上、大映1965「妻の日の愛のかたみに」角川映画よりScreenShot

これはこれでまあいいんだけど、若尾文子には寝たきりの病人じゃなくてもっと活躍してほしかった。まあ、そういうストーリーなので仕方ないです。

<追記>
Pinterestに画像を投稿する意志はないのですが、勝手にアップされています。という私もDVDから勝手に写真を取り出しています。いいのかなあ??
<追記2>
1965年ていうと「清作の妻」で情念が爆発したかと思うと、この「妻の日の~」では自らの内に愛情を閉じ込めてジッと耐えるだけの姿を示しています。同年の富本監督「花実のない森」で謎の女、そして翌年あの「赤い天使」に向かう。赤裸々な情動表出(増村監督的にはマグマていうか)と抑制とを演じきれていますね(でも、マグマは病床にあっても内に秘めているんだわ)。なんか、彼女は人間の愛情・欲望を知っているというか、洞察とか知恵とかがあって、しかもそれを演技するスキルが過去のいろんな役柄を経験したことでさらに磨きがかかっています。見ていてとりわけ演技していると思わせない自然さがあって、もちろん女優だから美形、こんな人はもう出てこないでしょう。また別の形で有村架純や満島ひかりが(あんまり見てないけど)輝いているのかなぁ?

まだ健康だった頃、畑仕事を終えて帰宅するときに夫に無理いっておんぶしてもらうシーンでは、足をくじいたという口実に白い布を足にくくりつけて楽しそうに夫に甘える姿なんて、翌年の「赤い天使」で岡部軍医に無茶ブリするところを思い出しました。

この映画はドキュメンタリーを基にしたようで当然ながら彼女が演じる女性はリアリティを持っていて、それでなくてもどの作品でも皆実在する人物のように思ってしまいます。78本ほど見て、映画と現実の見境がつかなくなっているのかも(笑)。いろんな若尾文子が何人もいます。

追記
昨日2021年2月7日(日)劇的ビフォーアフター「美人新妻も感動~」という番組で、新婚妻の実家の柳川でカップルが川を上ってお披露目する場面がありました。まさにこの映画とおんなじで、岸辺から行き交う舟から祝福のことばが投げかけられる。人生でもっとも晴れやかな瞬間でしょう。お嫁さんも若尾文子とはまた違った顔立ちで美人でした。



by snowmorning | 2019-01-15 20:24 | 映画 | Comments(0)
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